#RECARO 86/BRZ RACING TEAM モータースポーツの現場から
RECARO JAPANが始動させた新たな挑戦、"レーシングチームの発足"。
モータースポーツ活動を通して得た経験と知識は、サーキットから公道へ。
ここは製品開発の現場、でも、それだけではないのです。
2019年、世界的にも名高く歴史のあるシートメーカーRECAROがレーシングチームを発足し、プロレーサー脇阪寿一選手によるプロデュースのもと『RECARO 86/BRZ RACING TEAM』としてGR 86/BRZレースのプロフェッショナルクラスにフル参戦しています。カーナンバーの#906(86)と#973(BRZ)は、RECAROの歴史がはじまった1906年と、それまでの"座るだけ"という意識から変革し、安全性などの哲学をもってシートを創り始めた1973年に由来するそうです。
モータースポーツは競技であると同時に、自動車や部品メーカーにとっては製品を過酷な環境に置くことでテストし磨き上げる製品開発の場でもあります。
RECARO 86/BRZ RACING TEAMは、モータースポーツの分野でのブランド強化や、知識と経験を培うべくレース活動を始動させました。
GR 86/BRZレースは、指定部品以外では限られたパーツのみ選択ができる市販車ベースのワンメイクレースです。佐々木孝太選手がTOYOTA 86、新井大輝選手がSUBARU BRZをドライブし、両車にはRECAROのモータースポーツ用シート『RMS』(カーボンファイバーシェル)が装着されています。週末の本戦の前には練習走行や専有走行があり、RMSを装置した二台のマシンでは様々なテストも行われます。
そしてモータースポーツは、人材を育成する場でもあります。既に第5戦までを終え、毎戦、リアルなドラマが起こっています。サーキットでは気温や路面のコンディションによって繊細な変化があるため、予期せぬアクシデントやトラブルに見舞われることもあります。レースはひとりでは成り立ちません。チーフマネージャー、チーフエンジニア、プロデューサー、ドライバー、担当メカニック、それぞれのプロフェッショナルが限られた時間の中で判断と決断をし、対応に当たります。決勝日にマシンがグリッドにつけることですら、当たり前のことではありません。その中でチーム一丸となって勝利を目指します。RECAROブランドのプライド、目的、意図、開発、携わる人たちのおもい、チームワーク、今後の課題。ラウンドを重ねるごとに、それはより濃く深くなっていきます。
一台のマシンに課せられた課題はひとつだけではありません。
その一台を走らせるためにも、たくさんの“人”が関わっています。ただ速く走ることだけが“結果”ではない。RECAROが求める結果とは..
#RECARO越しのわたしの世界
開幕戦のときに、名前とそれぞれの役割を早く把握するため「チームの相関図を創ろう!」となったのですが、私のカメラロールに留まっております(汗)RECARO公式FBで毎戦アップされるかっこいい写真と動画もチェックしてくださいね。
RECAROチームのマネージャーとして帯同させていただくことになった私の目には、毎戦リアルなドラマが映ります。
5月に行われた菅生ラウンドのレースウィーク中、マシンがクラッシュするアクシデントがありました。痛んだマシンを直すべきか、直さないべきかの判断に迫られた時、チーム内の意見は割れました。"直したい、走らせたい”というメカニックのおもいと、"こんな状態からメカニックがドライバーのために必死に直しましたという青春ドラマではなく、何のために走るのか、何のために走らなければいけないのか、チーム全員が同じおもいでなければ意味がない"という首脳陣の現実的な判断。どこに焦点を合わすことが正解なのか、限られた時間のなかで決定しなければなりません。
最終的にマシンは直すこととなり、割れてしまったフロントガラスの代わりは、仙台から長野までその日の夜に車で取りに行き、一方でマシンの修復は夜遅くまで続きました。自分の担当マシンではないメカニックもみんなで一緒になって、翌日の午後までには"走れる状態"までもっていきました。その時の、"これは俺の愛車でもあるから"と言いながらマシンの修復にあたるメカニックの姿はとても印象的でした。
こんなこともありました。RECAROのピットを訪れた他チームのドライバーが、佐々木孝太選手に「なんでさっき譲ってくれたの?」と質問をしていました。それに対し佐々木選手は「俺のほうが明らかに遅かったら」と答えたのです。ひとつでも前の順位でゴールすることが目標であるはずのレースでなぜなんだろうと考えました。
まだ1年目のチームで、マシンのセッティングが煮詰め切れていない、タイヤのおいしいところを見つけ切れていない状況で、無理をして順位争いをし、接触などを起こしてマシンを壊したりレースを荒らしてはならない。まずはマシンを作ることを優先しているのだと思います。事実、佐々木選手は「どうしたら速く走らせられるか」といつもエンジニアと話し合っています。実際にマシンを走らせるドライバーは、順位を上げたい、勝ちたいという気持ちはチームの誰よりも強いかもしれません。でも、今はその状況ではないから、まずマシンを作る、という仕事を進めているのです。佐々木選手がいつもチーム監督に話す「走らせてくれてありがとう。遅くてごめんなさい」という言葉にも、佐々木選手のおもいがあらわれていると思います。「一番前で帰って来て下さいね!」と言うと、「そんな簡単に言うけどさー!(笑)頑張るけど。」と答えてくれます。
レースは一人じゃ成り立たないから、誰か一人でも反するものがあれば、きっとチームは成り立たないはず。RECAROチームは全員が普段は別々の場所で仕事をしているのに、チーム力が高いのです。それはきっと、それぞれが自分のフィールドで"プロ"の仕事を遂行するという意識からなのでしょう。
新規チームといえば良くも悪くも何もない状態からのスタート。主に私はホスピにいる時間が長いのですが、備品にしても全体のオペレーションにしても"ないもの"が多いのです。毎戦足りないものに気付き、毎戦補ってゆく。効率が悪いかもしれない、でもそれは新規チームならではの醍醐味だと私は思います。
"ないもの"を判断し、自分の役回り、自分が出来ること、今すべきこと、優先順位、それらをチームの全員が考えながら行動しているように私には見えます。
ピリピリする瞬間も勿論ありますが、少しでもリラックスできる雰囲気作りが出来るよう、私も心がけています。
チームアドバイザーの脇阪寿一さんが開幕戦の時に仰いました。"速いチームは撤収も速い"と。RECAROチームはいつも最後です。まだまだ課題も足りないものも多いですが、86/BRZレースも後半戦に入ります。今後、RECARO 86/BRZ RACING TEAMはどんなチームになっていくのでしょうか。この場所からしか観えないRECAROをBooyahでは伝えていきたいです。
"今年の経験は来年へ"。これはテント内、ホスピ部分にも言えること。色々なことが今はまだ未完成ですが、RECAROブランドのイメージも大切に、しっかりと整えていきたいですね。
RECARO村、発展途上中。
2019 Booyah Vol.4より